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福岡県外郭団体に謎の資産 約9億円(後)
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2012年2月10日 16:00

<決められないワケ>
0209_kensetugozyutu_.jpg ここ数年の受託増から、約5億円にふくらんだ現金預金についての取材に対し、(財)福岡県建設技術情報センター(以下、建技センター)および同センターを所管する県土整備部交通企画課は「使い道に困っている」と、一様に実情を吐露した。
公益法人である建技センターには、"構成員に対し利益の分配を行なわない"といった非営利目的であることが求められる。したがって事業収益は、公益事業など社会に貢献するように使われなければならない。県から独立した組織である以上、その判断はセンターの理事会が行なうが、同組織の特性上、"先送り"が懸念される。

 建技センターは、正規職員のうち派遣された県職員が大半を占める。「公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」の第3条は、職員の派遣期間を3年までと定めており、延長しても5年までとしている。一方、同センターの寄附行為は「役員の任期を2年(ただし、再任は可)」と定めている。人が頻繁に入れ替わるという組織の特性上、責任をもって、県民が納得のいく使い道(公益事業など)を検討し、それを決断することは行なわれにくいと考えられる。実際に、同センターには、使い道が定まらない現金預金と使途不明確な積立金の計約9億円が存在していた。

 前出の「公社等外郭団体の経営評価結果」で、外部専門家は「理事会の構成やその役割など、ガバナンスのあり方についても検討が必要」とも指摘しており、建技センターの運営を理事会が責任をもって行なっているかどうか、疑問を抱かざるを得ない。
 コンプライアンス上の問題もある。調査報道サイト「HUNTER」は、建技センターの隠ぺい体質を指摘。民間に再委託する場合の契約書の内容を「建技センターの経営活動と委託先の事業に支障をきたす」(建技センター)ことから、契約名や契約の相手先を黒塗りした状態で情報開示。県側も同内容を把握していないという事実を明るみにした。つまり、いわゆる"ピンはね"がチェックできないようになっているのである。

<問われる存在意義>
 建技センターの事業の中身についても批判の声があがっている。ある民間の設計事務所は「書類の形式などに固執するなどでとにかく時間がかかる」と怨み節。建技センターは、耐震改修計画等評価」で市町村の受付窓口を担当。市町村を除く地方公共団体などは、(財)福岡県建築住宅センターと分け合う。2者は、福岡県内の建築物の耐震診断および耐震改修計画などの評価を行なう「福岡県建築物耐震評価委員会」を共同で設置・運用しているが、同様の機関は、民間企業を含めて全国で80以上の設置がある。

「福岡県西方沖地震(05年3月20日)を受け、06年から耐震診断の件数が増加した。当時、当センターが構築した構造計算が普及しておらず、結果的に受注件数が急増した」(建技センター)ということだが、すでに民間でも行なわれている現状を鑑みるに、今や建技センターの存在自体が「民業圧迫」ではないか。

 建技センターは、新公益法人制度が施された08年12月1日から来年(13年)11月30日の移行期間末日まで、「特例民法法人」として暫定的に存続が認められている。期限までには、公益財団法人か一般財団法人を選択することになるが、「公益」の方向に向かっているという。存続へと向かう前に、存在意義そのものを考える必要がある。

(了)
【山下 康太】

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